ぼくの名は野田透。
現在、時刻は2時をまわったところ。
ぼくは今、ペンション『シュプール』の一室にいるのだ。
そして……。
ぼくはキイと静かに部屋のドアを開け、廊下に出た。
足を滑らすように右足から左足、右足、かかとから音を立てないようにつま先へ。
全神経を足に集中して……。
「えっ?これ、透さんの……車」
言い終わる前に、ぼくのパンチは釜井を捕らえていた。
「し、知らなかったんだ……」
彼は息を引き取った。
……快感♪
人を殺すってこんなに気持ちいいものなのか!
ぼくは後ろへと逆戻りし、ペンションへと向かった。
忘れ物を取りにいくために……。
「すいません、みどりさん。ぼくはここで人を待っているんです」
「そう、分かったわ。邪魔して悪かったわね」
みどりさんはドアを素早く閉め、部屋を出て行った。
なんて冷たい眼なんだ……とぼくは思った。
みどりさん、彼女は一体……。
そんなことを考えているときだった。
ガチャ、という小さな音がした。
ぼくは決意した。
こうなりゃ『シュプール』にいる女と……みどりさん、可奈子ちゃん、河村さん、啓子ちゃん、今日子さん、春子さん、と……6人か。
「7Pだ。夜這いペンション万歳ッ!」
まずは……春子さんから誘いに行こう!
ガチャッ!
「失礼しま〜す!」
「ま、窓から逃げよう!」
「バカ!ここは2階よ?幾ら雪が積もってるっていっても、飛び降りたら危ないわよ!」
「そ、そうか……それにこの猛吹雪じゃ身動き取れないか……」
ぼくは考えた。
そして……
「1、2……」
カウントの必要はなかった。
真理の口から信じられないほど大量の血が流れ出してきたからである。
ピーポーピーポーピーポー……。
救急車に真理が乗せられ走り去っていく……。
「透君。もし真理が死んだら、君に死んでもらうからね?フフフ」
小林さんがぼくの耳元でささやいた。
「くっくっくっ、何だかんだ言って真理も淫乱女なんだな」
そのとき、正面のドアから話し声が聞こえてきた。
ここは……OL3人組の部屋だ。
ぼくは……
ぼくは自分の部屋に戻ると、おもむろに鍵を掛け、ベッドにうずくまった。
こうしていれば、時が全てを解決してくれるだろう。
そのとき──。
「キャアアアアア!」
という大きな、聞き覚えのある悲鳴が聞こえた。
ま、真理?
いや、そんなはずはない……。
……幻聴だ、きっと……。
「ま、真理……」
ぼくは両膝をガクンと床に付け、廊下に座った。
「ぼくは一体どうすればいいんだ……」
ふうっと1つため息をついた。
そうだ、真理の部屋に行こう。
そこに答えがあるはずだ。
コンコン、ガチャ。
ノックをして、真理の返事も聞かずに部屋に入った。
「これは……」
目の前に広がるワインの数々に、ぼくは呆気に取られていた。
「凄いですね」
「ふふっ。ここに来たのは、ワインを見たり飲んだりするためじゃないのよ」
「えっ、違うんですか?」
意外な答えに思わず声が裏返ってしまった。
「じゃあ、一体何しに……」
「ちょっ、ちょっと待て真理!ご、誤解……」
言い終わらない内に、2発目の右ストレートが飛んできた。
とっさの判断でぼくは……
ぼくはまずディープキスから入り、徐々に徐々にゆっくりとゆっくりと下の方へ唇を動かし、舌を動かし、指を色々な場所へ動かし、少しずつ局部へと近づいていく……
「はあ……はあ……も、もう駄目……早く……早く入れて?はあっ、はあっ……」
みどりは悶えている。
ぼくももう入れたくて入れたくてたまらなかった。
「じゃあ……入れるよ?」
「う、うん。早くう〜……ふう……はあ……」
もう少し見ていたいので、まだ入れてあげないことにした。
ぼくはプレイしている内に、みどりさんなら……みどりさんになら言えそうな気がした。
「みどりさん?」
「オラァ!オラオラァ!ハアハア……」
「みどりさん!真剣な話なんです。聞いてください!」
「えっ?」
ぼくは勇気を出して言った。
「実はぼく、まだ女の人を知らないんです」
下手な男はゴミのように捨てていく……。
そんなところなのだ。
それより気になるのが、田中さん。
小林さんの話ではこのペンションの常連客だという話だ。
彼は一体何者だ?
そして、もう1つ気になることがある。
啓子ちゃんの言っていた『真理さん、もう終わってると思うから……』という言葉。
そうか、美樹本さんの後すぐに田中さんと……。
あんのアマァ〜!
「透ッ!」
精液で体の隅々までベトベトになっている真理が弁解を始めだした。
「透ッ、ち……違うの。こ、これは星の数が、星野のスローカーブが、えーっと……だからこれは……」
6Pで星の数もへったくれもない。
「ああ、真理……そうだろうね。男は星の数ほどいるんだろ?だからぼくよりも数を取ったんだよなっ」
「いや、だからこれはペンションのため、世のため人のため……Hを極めるため……じゃなくて、男が欲……」
「もういい!やめてくれ!」
『SMクラブ「奴隷」』
「さっ、一緒にイキましょう。透くん」
と言ったみどりさんの言葉が掛詞になっていることにすぐ気付いた。
そう、このクラブの名前のとおり、ぼくの心はすでにみどりさんに売っている。
迷いなどないはずだ。
ないはずだ。
でも……でも……
「ぼくは美樹本さんと田中さんがハメてる瞬間を見てしまった。だから、絶対ぼくを殺しに来る。そしてぼくの身近な人も……それだけは避けたいんだ。せめて真理だけでも……」
泣きながら語るぼくに男らしさを感じたのか、真理は
「ありがとう。私を守って!王子様」
ぼくは素に戻って言った。
「王子様?」
真理は自分が言ったことを取り消したい様子だった。
ぼくは真理の部屋に着いた。
ふう、……遂にきたんだ、このときが。
真理からOKサインは出ていた。
しかし!
だがしかし!
ふう、落ち着け。
深呼吸を1度、……そしてもう1度。
よし、行くぞ!
ぼくは……
真理が着替え終わったので(もちろん覗き見した)、ぼくは今度こそ真理の手を握り、ドアノブに手をかけた。
「開かない!」
「透……つまんないわよ?もっとボケを磨いてよね。ツッコミの気持ちも考えてよ!」
「真理!仕事の話はプライベートに持ち込まないのがぼくたちの決まりだろ!」
「もううんざりなのよ、このインポ野郎が!」
「そのツッコミもどうかと思うけどね!もう君とはやっていけないよ!じゃあね!」
と言って外へ出た瞬間に美樹本さんに刺された。
「真理……ごめん」
だが真理はすぐに起き上がり、そのタオルが投げ込まれる前にタオルを手で払い……ぼくを逆に1発でKOさせてしまった。
「うごっ!」
ぼくの口から血液がたくさん飛び出してきた。
「痛いよお……真理ちゃん。ぼく痛いよおお、うええん!」
ぼくはもちろん、すぐに眼を閉じた……。
シュッという風を切る音が聞こえた。
真理の右ストレートを避けたんだ……。
初めてぼくは真理の右ストレートを避けた。
真理はプロボクサーだから、これが避けられたのならぼくも……。
「透、凄いわ!ボクサー目指したら?」
ぼくは照れながら、こう答える。
「ああ、もちろん」
君がここにたどり着いたということは、我々のメッセージに気付いてくれたのだろう。
私の名前は中村光一。
チュンソフトの社長である……というのは、本当は嘘なのだ。
実は中村光一は、ある2人の優秀な人物から全ての著作権を買い取り、中村光一という名前を自ら名乗り、チュンソフトを支配しているのだ。
優秀な2人の人物は、何とかチュンソフトから逃げ出し、小さな研究社を設立している。
だが、もうそれも限界で……奴が……もうすぐ……ほら、あなたの後ろに……。
「可奈子、押さないでってば」
かすれた声がかすかに聞こえた。
と同時にぼくの心臓が激しく鼓動し始めた。
顔ににじみ出る汗、耳鳴りする耳。
今にも飛び起きそうだった。
足音がスススとぼくに近づいたかと思うと……。
バッ!
「うぐっ。な、な、何するんだ!」
……だが、これで分かった気がする。
『かまいたちの夜』の謎の全てが……。
かまいたち、それは妖怪でもなければ自然現象でもなかった。
全ての謎が解けた今、本当なら喜んでいるはずなのだが、なぜかそんな気持ちにはなれない。
それは多分、ぼくと真理の関係が跡形もなく崩れてしまったから……だろう。
こうしてぼくのかまいたちの夜は、朝を迎えた気がする。
だが、そこはまるで……奈落の底だった……。
ぼくは勇気を出して……
ぼくは部屋を出たとき、ふと考え込んでしまった。
しかし、ぼくも同じことをしたのではないか。
ぼくもOL4Pをしたことだし……。
はっ!
数的にはぼくの方が多いではないか!
そんなことが次々に頭の中へ浮かんできたのだ。
「うわあああ!」
つい声をあげてしまった。
真理は……真理は一体何人とセックスしているんだろう。
美樹本さん、田中さん、香山さん、俊夫さん、小林さん……ま、まさかそこまではいかないだろうけど……。
『SMクラブ「奴隷」』で立ち止まり、考えた挙句みどりさんにこう言った。
「やっぱりぼくは……ここには入れません。すいません、みどりさん!」
「残念だわ。せっかくいいペットができたと思ったのに……」
「すいません!」
ぼくはみどりさんを突き飛ばして真理の部屋へ直行した。
「えっ!み、みどりさん!」
「しっ!」
みどりさんは口に人差し指を当て、言った。
「黙ってついて来て!お願い」
ぼくは……
こんなときこそ、真理を……いや、女を守るのが男の役目ではないか!
ぼくは急いで真理の部屋に行き、ドアを開け、中に入り、鍵を閉めた。
ふう……これで一安心……そう思って後ろを向いた瞬間──。
真理の右ストレートがぼくの顔面を捕らえた。
「い、痛てて……何するんだ!」
見ると真理は風呂上りで、バスタオルを巻いているだけの姿だった。
「何するんだ!はこっちのセリフでしょ?透……違うの?」
ハッ!
「ま、真理、ごめん。こんなことになるとは思ってなかった……」
!
ま、真理……。
彼女の脈は、全く動いていない……。
息もしていない……。
死んだ。
真理が死んだ……。
しかもぼくが殺したんだ。
美樹本さんでも、田中さんでもなく、このぼくが……。
後ろを見ると、ドアが凹んでいる。
……まともに喰らったら死ぬな、こりゃ。
「真理、君を守りにきたんだ」
「え、私を守りに?」
真理は少し顔を赤らめた。
可愛すぎて、動揺を隠し切れずにぼくはうなずいた。
その後は思い出したくない。
どうやってこの山を下りたのか。
そしてあの2人をどうやって殺したのか……を。
ぼくは、きっと奈落の底へ落ちることだろう。
そう……落とし穴にはまるように……。
予想もしない結末がぼくを待っているだろう。
始めからおかしいと思ってたんだ。
『アホの坂田』に似てるぼくを誘うなんて……。
はっ!
でも香山さんもハゲてるし、もしかして!
「真理はハゲてる人が好きなんだろ?だから……」
「は?何言ってんのよ。私は吉田栄作がタイプなの。誤解しないでよ!それから、『真理』って呼ぶのはやめてよ。『真理』は本名なんだから。店の名前で呼んでよね……『メトロクロス』って」
「メ、メトロクロス……ちゃん?何か言いにくいなあ。しかもどっかで聞いたことあるような……」
ぼくは頭が痛くなってきて、その場に倒れてしまった……。
「みどりさん、イキますよ!」
ぼくはみどりさん……いや、みどりの上に乗りかかった。
スポーツで整えられた美しい裸体にピンク色の乳首。
「き、きれいだ……」
いつかの夕食のときに言ったか言わなかったかの言葉が、今は素直に口から出てくる。
「実は、私も……初めてなの」
ピンポーン!
大正解。
処女でーす!
「ここをね、こうすると……」
と言いながらみどりさんが右奥のワイン棚を押した。
すると……。
ズズズズと棚が棚の裏に隠れて、新しい入口が姿を現した。
「な、何てことだ……。こんなごく普通のペンションが、そ、そんな……」
さすがのぼくも、これには呆気に取られた。
なぜなら入口の前に、こう書かれていたからだ。
「だ、だだ……誰ですか?」
「……透君なのか!コラ!いつまで真理の部屋にいるんだ!もう3時だぞ!おい!」
しまった。
小林さんが様子を見に来たのか……。
「ど、どうしよう真理」
ぼくは困惑の表情で真理に尋ねた。
「どうしようったって、私がこんな格好してるから何言っても無駄だと思……」
そのとき、鍵の開く音が聞こえ……ノブが回っていくのが見えた。
「なに、もう勃たないって?ナメんじゃないわよ」
「えっ、でも3人に1回ずつハメたじゃないか」
「私たちが早漏の1回で満足すると思って?これだから若い男は……」
「やっぱり田中さんが1番上手いわ。多分、真理さんもう終わってると思うから、行ってみない?」
「そうね。こんなところ、いつまでいても仕方ないしね」
「行こう、行こう」
彼女たちは嵐のように去っていった。
「ん〜、合体!」
ぼくの息子は真理の局部を捕らえ、そして支配した。
「い、痛ああい!」
「えっ?」
見ると血が出ている……。
ま、まさか真理は処女だったのか!
「お尻の穴に入ってるんですけど……」
「それが何か?」
ぼくは聞き返してやった。
ぼくはそいつに走り寄って、こう怒鳴った。
「何やってるんだ、人の車の前で!」
振り向いたその男は……釜井……達郎?
「な、なんであんたがここに?オカマ篇はもうないぞ?」
「……いえ、ちょっと通りかかったもんで……」
という釜井は、ズボンを下げていた。
「貴様、人様の……俺様の車に小便を……」
みどりさんは蝋燭をぼくの上で傾けた。
すると、蝋が垂れてぼくの乳首に……。
「熱ッ!」
だが、それよりも気持ちよさの方が上だ……。
ああ、みどりさん……。
次々と蝋を垂らしていくみどりさんを見ている内に気持ちよくなり過ぎて、遂には射精してしまった。
「あらあら、いけない子ねえ」
階段を下りるとき、みどりさんが振り返ってぼくに話し掛けてきた。
その話はただ単純なものだったけど、ぼくはみどりさんの髪の匂いが離れなかった。
甘い匂いがした。
もう真理のことなんかどうでもいい。
今は彼女の忠実なる奴隷、野田透。
「窓から逃げるのよ、透!」
ぼくと真理は足音をわざと立てた。
……今のを信じてくれればいいんだけど。
もう廊下からは何の音も聞こえない。
「行くぞ、真理!」
と真理の手を握ったが、真理は動こうとしない。
「どうしたんだよ、真理!」
と振り返ったとき、バスタオル姿だったことを思い出した。
「服に着替えてから行こう……」
回したのと同時に、隣の部屋のドアが開いていて、そこから明かりがこぼれているのが目に入った。
「確かあの部屋は美樹本さんの部屋じゃ……」
気になったぼくは……
「あのさ、あの真理さんの彼氏の透さん、結構イケてない?」
「うんうん」
「今からこっそり行って、夜這いかけようよ」
「4Pするの?さすが夜這いペンションね」
なんてことだ。
このペンションの裏がそんなことになっていたとは……。
急いで部屋に戻らなければ!
前戯を始めて30分くらい経過しただろうか。
すぐにみどりの中へ入れてしまいたかったが、入れる以前の問題だ。
もうすでに白い物が飛び出していたからだ。
ぼくは正直に頼み込んでみた。
「イッちゃったんで、口で……してくれませんか?」
「まだ入れてもないのにイッちゃったの?いけない子ねえ……はぁ、はぁ」
またまたぼくは、いけない子に逆戻りしてしまうのか……いや、SMのことは今は忘れよう。
そこに真理の眠る姿があった。
ぼくは隣のベッドに座った。
すやすやと寝ている真理を見つめること10分。
依然として答えは見つからなかった。
真理が起きてくれさえすれば……。
そんなとき、もう1つ、謎の男、田中一郎のシルエットが頭に浮かんだ。
「う、うん……」
真理が目を覚ました。
「……ん?あれっ?」
気付くとそこは、ぼくが住んでいる東京のアパートのベッドの上だった。
「ね、眠ってたのか……やけにリアルな夢だったな……」
ぼくが寝てる横には、すやすやと寝息をたてている理絵の姿があった。
幸せとはこのことなんだろうなあ……。
さあ、夢なんて忘れて今日からまた頑張るか!
理絵がゆっくりと目を開けた。
ぼくは優しくこう呟く。
「おはよう、真理」
──その後は言うまでもない。
「しっ!声を出さないで。私たちはあなたが好きなのよ」
「ここがどういうペンションか知ってる?とても部屋を別々にするようなカップルの来るようなところじゃないわ」
と口々に言ってきた。
ぼくは全てを知っているので……
「分かってる。……さっき気付いたんだ。ぼくが真理に騙されていたことを……」
「じゃあ……いいわね。私たちが気持ちよくして、あ・げ・る」
OL3人組が次々に服を脱ぎ始めた。
「え……そ、そんな真剣な顔されてぶっちゃけられても……私、体育会系だから……」
「体育会系だからいいんじゃないですか!」
ぼくはみどりさんに近寄った。
「と、透君?ちょ、ちょっと待って……早まらないで、あっ、あっ、あっ」
素早くみどりさんの服(女王様風の)を脱がせることに成功した。
「覚悟はいいですね?SMなんかよりも気持ちいいと思いますよ?」
と言って、自分も服を脱ぎ始めた。(トランクス1枚だけど……)
「と……透?」
「う、うん」
「何してんのよ、こんなところで……まさか!」
「違うって。誤解すんなよ。もうぼくたちは何でもないんだから……」
「ごめんなさい。私、昨日、2人の男と寝たわ」
「ああ、知ってる。だから、もう真理のこと嫌いになっちゃったし、自分も嫌いだけど……」
「で……透は何しに来たの」
「なんでやねん!」
……なんで、やねん?
やねん……って香山さんじゃないか!
「香山さん!何であなたが真理の部屋のドアをノックする必要があるんです!」
……何の返事も返ってこない。
「真理……多分、君の女性ホルモンに導かれて君を襲いに来たんだ。必ずぼくが守って……」
「イヤッ!もういいの!私は香山さんの愛人よ。カモフラージュのために透を連れてきただけ」
ぼくは耳を疑った。
美樹本さんと田中さんの関係(ホモ)を知ってしまった以上、美樹本さんと田中さんは必ずぼくを殺しにくるだろう。
「う〜ん、何とかしなければ……」
とりあえずぼくは……
「あら、透君……どうしたの?こんな時間に」
春子さんは1人でお酒を飲んでいた。
「あれ?春子さん、お酒飲めたんですか?」
ぼくは疑問を投げかけた。
「ええ。でも……飲んだら凄くHな気分になっちゃうから……」
「じゃあぼくとセックスしませんか?」
ぼくは頼み込むように、そして自信満々な気持ちで問いかけた。
「……絶対イヤ!」
ガチャ!
「ま、真理ー!」
ぼくはベッドへ飛び込んだ。
……が、しかし、真理の他にもう1人……美樹本さん!
2人とも裸だ。
ぼくは言った。
「マスターキーだ!」
ぼくはより一層慌てることしかできなかった。
そして……ドアが開くのと同時に現れたのは、怒りの表情を浮かべた小林さん……ではなく、優しそうな顔で微笑んでいる……誰だ?
「あ、あのー。あなたはどちら様です?」
「ああ、私はこういう者です」
と言って名刺をくれた。
そこには、ある生命保険会社の名前と、船田治という名前が……。
他ならぬみどりさんに頼まれちゃあ仕方ない。
4Pは諦めるか……。
よし!
「みどりさんの頼みなら何でもしますよ」
「ありがと。じゃあ、付いてきて!」
みどりさんはそう言うとドアを開け外の様子を伺いながら、ぼくに来るよう合図した。
もちろん、ぼくは付いていく。
「どちら様?」
「あっ、真理ちゃん?ぼく、ぼくだよ……美樹本洋介。ほら、カメラマンの!」
真理がこっちを向いた。
『どうすればいいの?』と言いたそうだ。
「とりあえず、何の用か聞いてみるんだ」
ぼくは小声で真理に言った。
「何のご用?」
「……実は、真理ちゃんのヌードを撮らしてもらいたくて……」
また真理がこっちを向いた。
『撮ってもらっていいの?』と言いたそうだ。
あれから20分後──。
ぼくとみどりはセックスを終えて、服を着ていた。
「透……私も東京に行くわ」
「ああ、ぼくと一緒に暮らそう」
その前にまず、この眠気を何とかしなくてはならない。
「とりあえず、ここで一眠りしよう……」
ぼくとみどりは、幸せのために冬眠することにした。
「おやすみ……真理」
はあ……。
真理と美樹本さんがあんなことになってただなんて……。
ぼくはもう全てを失った気持ちだった。
……帰るか。
荷物をまとめたぼくは、忘れ物がないかチェックして部屋を出た。
ペンションの外に出たぼくは駐車場へと一目散に向かった。
ぼくの車が見えた……。
そしてその前に立っている男も……。
ん?
男……誰だ?
しかも人の車の前で何をしてるんだ?
「なっ、香山さんの……愛人ってどういうことだよ」
「どういうことって、そのまんまよ。お金よ。援助交際よ。私のお父さんがガンで手術費が必要なのよ。だから夜中にシャワーを浴びて待ってたのよ……」
「じゃ、じゃあここはまさか……あ、あの有名な!」
「そう、不思議のラブ・ペンションよ」
ラブ・ホテルならぬ、ラブ・ペンション……。
噂では知ってたけど、まさか真理の叔父さんが経営していたとは……。
しかも口調からすれば真理はこのペンションの常連だ……。
「どうして君は“シュプール”がこんなペンションだと知っててぼくを誘ったんだい?」
「どうしてって……叔父さんが1人で来るのは駄目だって言ったから……」
「それでぼくをカモフラージュにしてここに忍び込んだというわけか」
「……ご、ごめんなさい。私、あなたを傷つけるかもしれないとは思った……。でも、でも……私の中の“かまいたち”が暴れ出して、言うことを聞かなくなったの……。本当にごめんなさい……。……透、ごめんなさい……」
真理はそれだけ言うと、その場に泣き崩れてしまった。
!
う、美しい裸体だ……絶品だぞ、これは!
真理が目覚める前に、ぼくにはやるべきことがあった。
……ぼくの息子を、いざ真理の中へ!
「うっ……これは凄い。……気持ちいい……」
射精しました。
野田透、遂にやりました!
ガチャッ!
「真理ッ!」
!
……そこはもう、人間のいるべき場所ではなくなっていた。
真理に群がる男、男、男……その数5人。
「ろ……ろく、6Pじゃないかあああ!」
真理と他5人がぼくに気付いてこっちを向いた。
「ふふふ、いい子ね」
「えっ?」
「駄目よ!もうプレイに入ってるんだから!」
「は、はあ……」
みどりさん……。
スポーツマンで優しそうだった彼女が、こんな一面を隠し持っていたとは……。
だが、そんなことよりも今はプレイに夢中になることが大事だ。
「女王様〜」
ここは真理の部屋の前……だが、今はそんなことはどうでもいい。
真理さえ……真理さえ無事でいてくれれば……。
ぼくは軽くドアをノックした。
コンコン。
……全く反応がない。
ぼくは恐る恐るドアノブを回して、ドアを開ける。
そこには、無残にも息をしていない真理の姿が……。