二度あることは三度あるかもしれない。
ただ、二度すらない場合もあるから注意が必要だ。
一度あるだけでも幸運だと思える心も必要だ。(カム作)
めっぽう君
めっぽう君はすぐにお腹を壊すから正露丸が手放せない。
正露丸の賞味期限が切れていることに気付いていなかった。
めっぽう君の胃袋は正露丸を消化しきれなかった。
うずくまるめっぽう君は、ふいに肩を叩かれた。
振り返っためっぽう君はあることを思い出していた。
それは12年前の夏の蒸し暑い日。
駄菓子屋で買ったアイスを頬張りながら家路を歩いていた。
何の変哲もない石につまずき、アイスを落としてしまった。
ふいに肩を叩かれて後ろを振り返ってみると、名前も知らないおじさんが立っていた。
おじさんは優しい笑顔を浮かべて、新しいアイスをくれた。
小さな声でお礼を言って、走って逃げた。
めっぽう君はそんな幼い日の幻想を描いていたのかもしれない。
うずくまりながら振り返った途端に見知らぬ男に「邪魔だよ、おっさん」と殴られ、唾を吐かれた。
傍に落ちていた何の変哲も無い石を手に取ると、その男の後姿に向かって投げてやった。
小さな声で文句を言って、走って逃げた。
その後めっぽう君の姿を見た者は誰一人いない。