インターネットラジオ生放送中に執筆した官能小説。
〆切などのように、時には自分を追い込むことも大事である。
少しでも脳のリミットを外せれば、大抵のことは可能になるのだから……。(カム作)
蜜子の汁〜植木屋の情事〜
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蜜子はプカプカと浮いていた。
肌に纏わりついた汗が流れ落ちていくのが手に取るように分かった。
だからといって、蜜子自身に纏わりつく鬱陶しい男どもが流れ落ちていくことはなかった。
このマンションに蜜子が引っ越してきて早4年。
浴室が広いという理由だけで選んだにしては、とても快適だった。
バスタイムだけが蜜子にとってのいわば楽園なのだ。
今日は朝からマンションの庭に生えている金木犀を植木屋が切っていた。
また蜜子は愛人を増やす計画を頭の中で想像してしまい、気分転換のためにプカプカと浮いていたのであった。
しかし浴室には淫靡な湯気が立ち込めているように、蜜子の頭の中も湯気のような靄が広がっていた。
あの手この手で植木屋を愛人にしてしまおうと考えていた。
自分のプロポーションを確認するたびに、うっとりと見とれていた。
この街に住んでいる限り、蜜子に不可能はないのだ。
なぜならこの街が蜜子の汁を吸いだして止まないからだ。
蜜子は再び浴室に添えつけられている鏡に目をやった。
20代前半と言っても通用するであろう幼さの残る顔がそこにはあった。
バスローブを羽織った蜜子はおもむろにベランダに出た。
下を覗けば植木屋がせっせと汗を流して作業をしていた。
蜜子はその汗を自らの体へと収めたい衝動に駆られた。
「植木屋さーん」
軽いノリで声をかけてみた。
もちろん腹の中では淫らな蜜子が踊り狂っていた。
植木屋は会釈をすると、少し微笑んだ。
いや、蜜子の想像がそう見せたのかもしれない。
植木屋がはさみを動かす手が、女体を触るそれに見えて仕方がなかった。
蜜子は体の芯が熱くなるのを抑えることができなかった。
理性を失った蜜子が取った行動は、人間の本能を刺激した。
バスローブを植木屋めがけて投げたのである。
植木屋は一瞬たじろいだ後、すぐに蜜子の方へと振り返った。
だがそこに蜜子の姿はなかった。
植木屋愛人計画第1段階は任務完了である。
蜜子は急いで服を着ると1口ワインを飲み、自分の仕掛けた罠を自賛していた。
高鳴る鼓動に期待を寄せながら……。
玄関のチャイムがけたたましく鳴り響いた。
蜜子はじらすように間をおいた。
ベランダから下を覗いても、植木屋の姿はすでになかった。
ドア1枚隔てた先に、自分のバスローブを持った名も知らぬ植木屋がいることを想像するだけで、蜜子の子宮は激しく反応した。
3回目のチャイムが聞こえたのを確認した後、
「はい、どちら様?」
と白々しく応答したのである。
「あっ、植木屋です。バスローブ落とされませんでした?」
間髪を入れずに蜜子はドアを開けた。
わざとボタンを掛け違えて着ていたため、蜜子の湯上り卵肌がシャツの間から覗けてしまう。
植木屋が視線を下ろしたのを見計らい、蜜子は植木屋の顔を両手で持つと、自慢の2つの恥ずかしい膨らみへと密着させた。
完全に不意を突かれた格好となった植木屋は、抵抗することすら忘れていた。
やっとの思いで顔を上げた植木屋に向かって、蜜子はこう囁いた。
「そろそろお昼休みにしません?」
植木屋は申し訳なさそうにお茶を啜っていた。
一方の蜜子は、掛け違えたボタンを直そうともせずにほくそえんでいた。
「お昼ご飯は食べました?」
唐突に蜜子は切り出した。
驚いたように体を震わせた植木屋だったが、すぐに平静を装って答えた。
「い、いえ。まだですけど……」
すると蜜子は嬉しそうに笑いながら、
「よかった!植木屋さんと一緒に食べたいと思ってたの」
と、さりげなく男の本能をくすぐった。
男は、出される料理を次々と口に運んだ。
そうすることで理性を保とうとしていたのかもしれない。
相変わらず蜜子は笑顔で素肌を見せ付け、時折注がれる男の視線を楽しんでいた。
早々に男は豪華な昼食を食べ終えてしまった。
「あら、足りなかったかしら?」
耳元で発せられた蜜子の甘酸っぱい声が、何度も男の中でこだました。
「じゃあ続きは向こうの部屋で食べましょう?」
ドアが開いたままになっているその部屋の中をちらっと見ると、男は困ったように顔を赤らめた。
蜜子は答えも聞かずに、自分の衣服を脱ぎながらベッドルームへ歩いていく。
しばらく俯いていた男だったが、ついに耐え切れなくなり蜜汁へと吸い寄せられていった。
蜜子の想像通り、植木屋の仕事には無駄がなかった。
上手く蜜子の性感帯を探り当て、ここぞとばかりに狙いを定めて刺激してきた。
植木屋の手が触れる場所すべてが性感帯に思えるほど、蜜林を濡らしてしまっていた。
はさみで枝を切る姿から想像していた職人芸が、これほどまでに自分を高揚させるものだったことに、蜜子は満足していた。
剪定されていないであろう植木屋の剛毛が、そのテクニックとのギャップを感じさせた。
息を荒げた植木屋は、自らの大木に花を咲かせるため、蜜汁の中に根をうずめていった。
先ほどまで植木屋が身に着けていた作業着の臭いに、蜜子は酔いしれていた。
それを察知した植木屋は、自分の体を何度も蜜子に押し付けた。
次第に植木屋の鼓動が早まっていくのが分かると、蜜子は植木屋の背中に回した腕を更に密着させた。
植木屋は、蜜子の強い抱擁に耐えているのがやっとの状態だ。
そしてその表情は、来るべき蜜子の絶頂を早めた。
……2人が絶頂を迎えた頃、肌寒い秋の日の光が部屋を照らしていた。
光の中で、蜜子はもう1度この植木屋に抱かれたいと思っていた。
そう、蜜子と植木屋の情事はまだ始まったばかりだ。