これから始まる高齢化社会においての正しい手引書。

……となるかは読者の捉え方次第である。

何はともあれ、元気に暮らしたいものである。(カム作)

 

 

がんばれ、おじいさん! 第1話 

 

「風邪ですな」

医者はぼくにそう告げた。

「ほ、本当なんですか?」

医者はこくりと頷き、それ以上喋りはしなかった。

ぼくは礼を軽くしてすぐに診察室を出た。

待合室には老いた人が2、3人ほど座っていた。

ぼくも気付いたらもう、こんな年老いた姿をしていた。

「次の方どうぞ」

と看護婦が大きな声で言った。

ぼくの耳にそれが何度も何度もこだまする。

「耳が痛いったらありゃしない」

文句をたれながらぼくは薬をもらい、お金を払った。

美人な看護婦が「お大事に」と素敵な笑顔で言ってくれた。

今となっちゃもう……なんとも思わない。

昔のぼくなら胸ときめいたことだろうが。

ぼくは吉永医院を出ると、真っ直ぐ家に帰ることにした。

すれ違う人は皆、老人ばかりだった。

そう、今は2XXX年。

2分の1が老人である世の中。

 

 

がんばれ、おじいさん! 第2話 

 

「風邪ですな」

医者……吉永友重さんはぼくにそう告げた。

「ほ、本当なんですか?」

吉永さんはこくりと頷き、それ以上喋りはしなかったので、ぼくは軽く礼をしてすぐに診察室を出た。

待合室には老いた人が2、3人ほど座っているが、かくいうぼくも、もう80歳を超えている。

風邪をひくといつも父がここ、吉永医院へ連れてきてくれたものだ。

あの頃はまだ小さかったなあ、ぼくも……。

気付いたら、いつの間にか老いていた。

ぼくはおばさんに薬をもらい、お金を払った。

吉永医院を後にしたぼくは、寄り道するところもないので、真っ直ぐに家に帰った。

すれ違う人は皆、元気そうな老人ばかりだった。

あたかも老人であるのが当たり前かのような顔をして、皆歩いていた。

そう、今は2XXX年……3分の2が老人である世の中である。

 

 

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