各話ごとにリレーしながら書いた小説。
1話はやんも、2話はあぶりみかん、3話はカムが執筆。
新入社員と部長が文字通りバッテリーを組み、不景気を乗り越える。
OMORIO伝説 第1話
俺は晴れて(株)OMORIOから内定をもらった。
第1志望の会社なのでとても嬉しかった。
そして入社1日目。
俺はウキウキした足取りで30階建てのビルに入った。
一体どういう仕事が俺を待っているのだろう。
あれこれ思いをめぐらせ将来の自分のキャリアプランを思い描いてしまう。
その大きな部屋には部長1人だけが座っていた。
「部長!私の初仕事は何ですか?」
「ん?ないよそんなもん、不景気だからな」
「え!なんですって?」
俺は一瞬目の前が真っ暗になる。
「そんなことよりキャッチボールしようぜ。ほら、グローブも2つ。屋上がいいぞ」
悲しかった。
仕事が無いだなんて……。
しかし本当に何もすることが無いので毎日毎日部長とキャッチボールをした。
半年ほど続けたところで俺の球速は145km/hを超えた。
恐らく憎しみと悔しさをボールにこめたからであろう。
それから部長とバッテリーを組みジャイアンツに入団し、俺の第2の人生がはじまった……。
OMORIO伝説 第2話
第2の人生が幕を開けた。
俺と部長は開幕スタメンだった。
俺の球速は既に150km/hを超えていたが、いかんせん部長は妻子持ち。
部長は俺の投げる球をことごとく避けた。
そして部長は避ける度にニヤリと微笑んだ。
それが忌々しかった。
客席はどよめき、球場全体が静まり返った。
「何だこのバッテリーは」
俺はその静けさが永遠に感じられた。
その時スタンドの客席から小さなOMORIOコールが……。
それはたちまち球場全体を包み込みOMORIO一色になった。
鳥はさえずり、雲は踊り、太陽は笑っていた。
森からは熊さんまでやってきて、猪とダンスを披露している。
まるでお祭り騒ぎだ。
その喧騒に紛れ、部長の微笑がいっそう顕著なものとなったのを俺は見逃さなかった。
俺はこう心に誓った。
OMORIO……、俺がぶっ潰してやる……。
OMORIO伝説 第3話
「4番キャッチャー、部長」
アナウンサーのかつぜつの良い声が私の名をコールした。
「OMORIO!OMORIO!」
と同時に客席中からのOMORIOコールがドーム全体にこだまする。
全く人生とはどうなるか分からないものだ。
去年入ったばかりの新入社員と2人でプロ野球のオールスター戦に先発で出ているのだからな。
今この一瞬にしかできないお祭り騒ぎのオールスターを見せてやる。
私はバットを握る手を強めた。
──第1球。
甘く真ん中に入ってきたカーブを私は思い切り叩いた。
するとボールはOMORIOの波打つライトスタンドに吸い込まれていった。
「ホーモリオラン!」
私はこの時やっと会社から決別する決心がついた。
新入社員よ、オールスターが終わったら……お前のボールを真っ向から受け止めよう。
そして奇跡の逆転優勝を目指そうではないか。
私の目は涙で溢れていた……。