二度寝はとても気持ちがいいものだ。

誰にも邪魔されない空間であればあるほど、気持ちがいいものだ。

と同時に、無防備であることも忘れてはならない。(カム作)

 

 

焼死千万 

 

とある夕方、部活から帰って疲れていたわたしは、自室のベッドに倒れこみました。

ものの数秒で意識がなくなり、すぐに眠りに就きました。

……次に目を開けたときには、すっかり日も沈み、外は暗くなっていました。

まどろみから抜け出すよりも二度寝を選択。

枕元のコップに入った水を飲むと、先ほどよりも深い眠りに就きました。

 

遠くの方から声が聞こえます。

叫び声でしょうか。

次第にはっきりとその声が聞こえてきます。

「火事だーッ!」

わたしはすぐに飛び起き……たつもりでしたが、なぜか体が動きません。

意識が戻ってくると、酷い煙の臭いに咳き込みます。

部屋中から火の手が上がっていて、体が文字通り焼けるように熱いです。

わたしはベッドに寝たまま、全身が痺れていることに気付きます。

そして恐怖の中、だんだんと意識が薄れていきます。

 

朦朧とした頭で考えました。

共働きの両親がいつもお金に困っていたこと。

枕元のコップは誰が用意したのか。

この体の痺れは一体何なのか。

全ては炎の中に溶けて消えていくのでしょう。

わたしの肉体と共に……。

 

 

PAGE TOP▲

[PR] ちょびリッチ

© 2002 ノ・ベル研究社