石がくれた限りない力。
その力を糧に明日へ向かう男。
彼に待ち受けるのは希望か絶望か。(カム作)
ストーンボーイズ 目次
■第1回 … 雨の繁華街
■第2回 … ネオンの意図
■第3回 … 暗闇の悪戯
■第4回 … 老人の告白劇
■第5回 … 疑惑の欠片
■第6回 … 未完のロンド
ストーンボーイズ 第1回 雨の繁華街
何度も心の中で繰り返す。
しかし、どれだけ繰り返してみても、何も変わりはしない。
動いているのは時計の針だけだ。
あの針で自分の心臓を切り刻んでやりたい衝動に駆られたことも、しばしばあった。
そんな衝動でさえ、自分を変化させるほどの力を発揮してはくれない。
次第に意識が朦朧とし、今日も眠りに就く。
そう、それでいい。
害はない。
きっかけは何の変哲もない雨だった。
ある日の午後、急に降り出した雨。
いつものように街をふら付いていた俺は、反射的に雨宿り先を探す。
寂れた繁華街の横道へ……。
初めて目にする細い道だ。
陰鬱な雰囲気が、万人受けを許さない。
それにも増して胡散臭さが尋常でない。
道の両脇に建ち並ぶ小さなビル群が、可能なだけの光を遮る。
その代わりに刺青やら骨董品の看板が、どす黒い埃まみれの光を放つ。
明らかに腐った通りだ。
ふと地面を見ると、埃を吸い込んだのだろうか、雨水が黒い金属的な光沢加減で流れている。
走っているだけでズボンの裾が汚れているのが想像できた。
早く店に入らなくては。
焦れば焦るほど、まともな店が見えてこなくなっていった。
どれだけ走っただろうか。
時間にしては1分といったところか。
道なりに進んでいき、ゆるいカーブを曲がり切った。
そこで俺は遂に見つけてしまった。
この闇の通りに似つかわしくない、ネオン輝くその店を。
目を細めているのではないか、という錯覚に陥りそうになるくらい、無数の光の残影が視界に広がる。
足を止めて看板を見たが、電飾が邪魔して店名が全く見えてこない。
魅入られたように店のドアを開けていた。
カラーン、コローン。
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