石がくれた限りない力。
その力を糧に明日へ向かう男。
彼に待ち受けるのは希望か絶望か。(カム作)
ストーンボーイズ 目次
■第1回 … 雨の繁華街
■第2回 … ネオンの意図
■第3回 … 暗闇の悪戯
■第4回 … 老人の告白劇
■第5回 … 疑惑の欠片
■第6回 … 未完のロンド
ストーンボーイズ 第3回 暗闇の悪戯
老人は表情ひとつ変えずに俺を凝視している。
カッと見開かれた眼球は、白目がほとんど見えないくらいに充血しきっていた。
「どうぞ、こちらへ」
相変わらずの嗄れ声が耳につく。
何とも頼りない光を頼りに、必死で老人についていく。
その老人はというと、何の迷いもなく一直線に歩いている様子だ。
左右に手を伸ばしてみるが、壁に触れることができない。
ただただ2人の足音だけが暗闇に響き渡っている。
音の響き具合からして、石でできている地下道といったところだろうか。
試しに大声で叫んでみたかったが、もし老人が機嫌を悪くしてライターの炎を消してしまったら一巻の終わりだ。
老人はまだ止まる気配を見せない。
……暗闇は時間を忘れさせる。
どのくらい歩いたのか、全く検討もつかなくなっていた。
だが、俺が今この状況で選択できる行動は、たった1つしかない。
文句を言わず老人に付いていくだけだ。
それ以外の行動に出たところで、助かる可能性は余りにも未知数すぎる。
歩けば歩くほど不安材料が増えていき、心理的に追い詰められていく気がしてならない。
闇がもたらす極度の緊張からか、先ほど体に受けた雨は全て汗に変わっていた。
ギィィィィ。
何の前触れもなく足音が不快な音にかき消された。
驚きを隠せない体は一瞬にして震え上がる。
寂しげな女の悲鳴に聞こえたが、大方さび付いた扉の開く音だろう。
少しの間の後、おぼろげな光が差し込み、予想通り扉のシルエットが浮かんできた。
光に飢えていた俺は、すぐさまその扉をくぐった。