石がくれた限りない力。
その力を糧に明日へ向かう男。
彼に待ち受けるのは希望か絶望か。(カム作)
ストーンボーイズ 目次
■第1回 … 雨の繁華街
■第2回 … ネオンの意図
■第3回 … 暗闇の悪戯
■第4回 … 老人の告白劇
■第5回 … 疑惑の欠片
■第6回 … 未完のロンド
ストーンボーイズ 第2回 ネオンの意図
情緒の溢れるドアベルが鳴った。
これ以上は濡れまいと慌てて店内に入り、すぐにドアを閉める。
ドアノブから手を離し、店の奥を振り返ったところで気づいた。
……闇だ。
1点の光すらない真の暗闇だった。
いや、何色とも覚束ぬ、しいて言うなら緑色に近い、光の名残だけがあった。
表のネオンに与えられた安心感が裏目に出たようだ。
自分が目を開けているのかすら分からなくなってくる。
その場で1歩も動けずに立ち尽くしていると、カチッという音がどこからともなく聞こえてきた。
そして赤く小さな光が1つ。
どうやらライターらしい。
外観からしても、この店はさほど大きくはないだろう。
意を決して声を出そうとしたが、その決意はすぐに失せてしまった。
ライターの光が猛スピードで近づいてきて、顔の数センチ手前で止まったのである。
収縮し鼓動を忘れる心臓。
……次に穏やかな足音。
コツコツと一定のリズムで大きくなり、止んだ。
多分、すぐ手前で止まったはずだ。
思わず身構えようとしたが、とても間に合わなかった。
揺らめく炎ごしに老人の顔が浮かび上がったかと思うと、しゃがれた声を発したのである。
「いらっしゃい」