石がくれた限りない力。
その力を糧に明日へ向かう男。
彼に待ち受けるのは希望か絶望か。(カム作)
ストーンボーイズ 目次
■第1回 … 雨の繁華街
■第2回 … ネオンの意図
■第3回 … 暗闇の悪戯
■第4回 … 老人の告白劇
■第5回 … 疑惑の欠片
■第6回 … 未完のロンド
ストーンボーイズ 第4回 老人の告白劇
重い扉の先にあったのは、石で作られた小さな部屋だった。
弱々しい炎を放つ、長めの蝋燭が5本ばかり、部屋の四隅と中央に置かれており、中央の蝋燭を囲むように赤色の図形が描かれている。
星型を一筆書きした図形と、その周りを囲む円の図形が、星の角で交差している。
よく見ると、そこらかしこに見たこともない文字列が書かれている。
……それにしても赤い。
見れば見るほど不気味な赤さを強調してくる。
喩えるならば、そう、人間の血を乾かしたような色だ。
俺は少し身震いしながら、部屋の向かい側に目をやる。
いつの間にやら老人は椅子に腰掛けている。
背もたれの高い、肘掛のついた濃い紫色の椅子は、この部屋の不気味さを更に増幅させていた。
しばらくの沈黙の後、老人は思いつめた面持ちで口を開いた。
「ここは裁きの石を売る店」
俺が理解できずにいることを察知したのか、老人は続けた。
「ワシの黒魔術の施しを受けた闇の石……呪いの石とも呼ばれておる」
あの異常なまでにネオンが輝く店構え、闇の店内、はたまた老人自身の奇怪さからか、疑う余地を微塵も感じさせない。
「若かりし頃、黒魔術に魅入られるように人を殺めて以来、一睡もせず、細々とした光でこの地を掘っては石を運び続け、この封印の部屋を作り上げた」
真相へ近づいていくごとに、俺の鼓動は少しずつ早まっていく。
それは老人も同じようで、顔に刻み込まれた深い皺が、ごく僅かな痙攣を繰り返している。
「この部屋が完成した後、ワシは生きたままの処女から全ての血を抜き取り、骨になるまで焼いた。そして骨を粉々になるまで砕き、血と混ぜた。そうして描き終えたのがこの魔法陣だ」
話の異様さに喉の渇きを覚え、思わず唾を飲み込む。
喉の奥に、血の味が広がっていった。
老いぼれたこの男は2人の人間を殺したというのだろうか。
いや、ボケているだけかもしれない。
そう思いながら下を向くが、赤い魔法陣を目にするだけで、処女の断末魔の叫び声が耳の奥でこだまするようだ。
今までの話が全て本当ならば、老人は裁きの石とやらを俺に差し出すに違いない。
恐らく上手いことを言いつつ法外な値段で売りつけてくるだろう。
……しかし、生きることにすら意味を見出せず、くすぶり続けている俺が、大金など持ち合わせているわけがない。
完全に吹っ切れた俺は顔を上げ、まっすぐに老人を見据えた。